第二工場説

前回の続き。

 

 

2020年。2月には六島の井関君のところはじめ、久しぶりに近くのブルワリー巡りをしながら(懐かしい・・)、第二工場を具体的に考えるようになりました。

 

(六島上陸中↓)

 

これまでのまめまめびーるは意図して「地ビール」の色合いが濃く、島のものを用い、島内や観光で来島された方、そこからのご縁がほぼすべてのお客様。卸先やリピーターさんも大半顔のみえる相手。だからこそ、島の素材という大柱に支えられ、定番ですらいろいろなチャレンジや変化を遂げても、受け入れてもらえることが多かったと感じます。

 

拡大後の採算も考えると、経費だって2倍以上。きっと今までお断りしてきた・お待たせしてきた需要に応えるだけでなく、醸造量・マーケットを拡げなければいけません。人通りの多い場所でTAPルームを開き飲食業に注力するか。製造業に注力し国内視野にビールを独り立ちさせるか。2つが有力策として残りました。

 

だけど、いざ実現を考えると、まず前者の飲食業に注力への答えは即ノー。夫は醸造業に専念したかったし、ここで暴露するのもなんだけど飲食・接客が苦手。私は今の醸造所があるこの場所が好きすぎて離れる気なし。この場所でまだまだやり続けたいこともたくさんある。ビールを飲む空間も、庭も、いろんな工夫もまだ山積み!お互いすでに結構時間も詰まってるぞ。しかも留めはこどももいる今、夜営業にはお互い完全消極的。まったく話が進みませんでした。

 

誰かスタッフなり他者に店を任せる案も出たけれど(現実的)、この案も進まず。開業したての頃なんてよくもそこまで!って今なら驚く位、一日の店営業まるまるスタッフに任せていた時もあったけれど、時と共に自分たちのニュアンスで、自分達の手でしたいことが増え、それがたのしみとなってきていました。経営でなく、自分たちがつくること、手を動かすことを軸に続けたいと思うようになっていました。

 

 

そして後者の製造業に専念し、ビールをひとり立ちさせる案。

成長も真っ只中の今のクラフトビールシーンで、うちのビールのクオリティがそのフィールドに立てるのか。そもそも世に送り出したいのか。話し合ったけれど、いずれも答えはまたノーでした。

 

仕込んだビールが熟成してくると大体「今回のめっちゃうまいわー」と自慢してくる夫。だけど、ビアスタイルとかコアなクラフトビアファンのニーズとか、「クラフトビールをつくる」ことはあまり意識していませんでした。島のもので、自分が飲みたいものをつくる。自分がうまいものをつくる。その繰り返しです。

 

マーケットを大きくするには、つくるもの、つくり方にも大きな方向転換が必要。そのための新たな技術習得や品質の安定、準備期間も必要。そこはふたりとも意見が即一致しました。けれど、その方向転換が、特に夫にとってまったくしたいことではなかったようで、「つくりたいもの自由につくられへんやん」とぼやきはじめました。

 

 

もうこうなってきたら、お手上げ。そもそも全然おっきしたないやん!

 

結局、場所、醸造規模、つくり方、仕事のスタイル、暮らしのスタイル。どれをとっても今の状況にその理想とするものがこれまでに詰まっていて、大きくしたくない!この醸造所のまま続けよう!という結論にすんなりと落ち着きました。

 

そもそも醸造設備が需要に追い付かず、求められている以上追い付かないと!という焦りに駆られていたけれど、やはり自分達がベストとするスタイルで、少量でもおいしさや価値をもっと高めることが一番!

 

同時に、この話をしながらも、合間合間で心の内にあるビールや店の改善点やアイデアを列挙しはじめたらキリがありませんでした。まだまだするべきことがある…。この規模で続けるにしても、クオリティUPは必然。そこは再認識できて本当によかった。

 

「小豆島×ビール=『 』」という合言葉に、「もっとおいしく、もっとたのしく」ビールをつくる。

数年前にふたりで考えたけれど、今も大事なこと、立ち戻るところは同じでした。そういえばこのフレーズに辿り着いた開業前も、おんなじようなこと何日も何時間もかけて話し合ったことを、ふと思い出しました。

 

こうして第二工場説は幕を閉じました。