新タンク導入に至るまで

醸造所の発酵タンクを新たなものに入れ替えました。

メインをこれまでの200Lタンク2基から、機能・形状が異なる200L×2基・300L×2基に。

 

「第二工場を新設したり、規模を大きくするのはやめよ」その答えには至ったものの、同規模の醸造量を継続するにもこれまでのタンクではいくつかの点で限界がみえてきていました。

 

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1つ目は、熟成。

有難いことに昨年のコロナ渦でさえ生産が需要に追いかけられている状態。これまで熟成を急いだり、お客様を待たせることもありました。そんな状況を変え、しっかり熟成させたベストな状態で、店頭でも出荷先にもお待たせせずに出荷したい。スタイルによって熟成期間もコントロールしたい。そのためにはタンクキャパを拡げる必要がでてきました。とはいえ、「2基くらいは500~1000Lタンクにして、定番は1度にたくさんつくれといたらいいよなー」そんな理想のタンクを入れるようなスペースはなく、結局今の醸造所の幅・高さに目一杯おさめられるタンク容量と数を入れることにしました。

(↑新たな200L×2基、天井もぎりぎり)

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2つ目は、温度管理。

私たちは最小限の費用で、先輩方から教わった知恵や工夫とともに、タンクの足にコロコロキャスターをつけ、仕込室からエアコン設置の発酵室、熟成のためのプレハブ冷蔵庫へと段階的に移動させる方法から醸造所をオープンしました。最初はそれでいい。限られた資金で事業を始められることができました。けれど、品質を追求するに伴い、やはり太刀打ちできない壁にぶつかるようになります。特にピルスナーや低温発酵のもの、同時に発酵温度が異なる液種を管理している等、アナログ温度管理は本当に大変。そして温度管理は当然品質管理に直結します。

 

 

これからはチラー(冷媒機)でタンクの温度を1基ずつ直にコントロールできるようになります。決して先進的でも何でもなく、大多数のブルワリーでされていること。私たち以降にできた多くのマイクロブルワリーでも最初からされていることが多いこと。それが結局必要で。スタート地点にようやく追いつくような感じです。

(↑アメリカから云カ月遅れで到着したチラー)

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そして3つ目がホップ。この存在も本当に大きい。

ペールエールやIPAについては、私たちは大きく出遅れたことを痛感しています。

 

夫はもともとペールエールが好きだった。でもあえてホッピーなビールを自分のブルワリーで挑戦しようとしてきませんでした。苦み強いホップ感が苦手なことと、華やかな香り高いホップ感を演出するために必要なドライホッピング製法が選択肢としてなかったこと大きな理由かと感じます。アンバー系やフルーツビール等、主張が強すぎない飲みやすいビールが、島の常連のおっちゃん達に好まれたこともありました。

 

ところがこの数年。国の酒税法改定等も重なり、ご存知のとおり、日本でも多くのブルワリーがドライホップ製法を取り入れるようになり、時に華やかで、時にダンキーなIPAやペールエールが世に出回るようなりました。それでも最初それは他人事で、ドライホップによる汚染リスクを考えると「みんなようやるなー、こわくてよーやらんわ」という期間が続きました。

 

けれどもIPA、ホップの世界はとどまることなく年々世界的に進化し、そんなビールは飲めば飲む程、醸造家のつくりたい欲を刺激します。「IPAないですか?」店で聞かれることも随分増えました。

それからしばらく、「俺もやっぱりこんなホッピーなビールつくりたいわ」「こわいけどIPAつくろかな」夫がそんな話をし始め、またマットがうちの醸造所でつくったビールをメインにビアハウスを開く計画も具体的になってきました。そこから、彼らは何度か今のタンクでドライホップに挑みました。が、案の定、時に大幅に、時にわずかに、苦味・渋みが強く出すぎたり、オフフレーバーが感じられたり、100%納得いく仕上がりまで届きません。なんとかうまくいってもできるのはペールエールまで。IPAに本格的に挑戦するには難がありました。

 

もちろん経験数もあるけれど、これまでの寸胴型タンクでは、底に残ったホップ粕を取り除くことができないことは大きな要因。そもそも酵母もだけれど…。ホップの場合は、樽詰めの段階で浮遊物・沈殿物として残ったり、いらぬ苦味やオフフレーバーとなったり、酵母についてもヘジー系を除いて意図しない濁り等が残ります。

 

「やっぱりコニカルタンク入れるしかないな」とまさや。「コニカルタンクが来るまではIPAつくらない」とマット。そんなこんなで下部が60度の円錐型になっているコニカルタンク。そこからホップ粕・酵母を取り出せるタンク。多くのブルワリーでみかけられるあの形のタンクを導入する結論にいたりました。

そんなこんなが今回新たなタンクを迎えることになった経緯です。

 

これまでの超アナログ設備は、開業間もない私たちに多くの原理的且つ体験的な学びを与えてきてくれました。然るべき段階で然るべき学びができたことには感謝が尽きません。これからは新たなタンクで醸造5年目、まめまめびーるにとって第2ステージ…そう言わせてもらわないと困る位、うちにとっては大きな買い物!品質を高めるとともに、さらに幅広いビールづくりへとしていきます。

(↓これまでの寸胴型タンク 200L×2基、お世話になりました!)