SHODOSHIMA100-そしてビールに

ひと夏を越している間に、伊喜末からたくさんのホップが届いています。猛暑や大雨、再び暑さがぶり返し、うちの畑には厳しい夏だったけれど、その中で去年の云倍量のホップは大きな喜び。年々着々と収穫量を上げてくださっている農家さんたちには頭が上がりません。

 

 

さて、途中になっていた「SHODOSHIMA100」最後の話。麦芽、ホップ、酵母、水。すべての原料が揃い、いよいよビールづくりです。

 

「全部原料が揃ったらどんなビールつくろかなー」2020年の麦芽収穫の帰り道、車中の会話。一緒にきてくれていたドイツからの友人より「誰に飲んでもらいたいの?その人たちの意見を聞くべきだ」と熱弁が繰り広げられました。真っ先に浮かんだのは、もちろん伊喜末のプロジェクトのみなさんの顔。本当は一緒に飲みながら意見を聞きたかったけれど、既にコロナ渦だったので、さっそく複数種の瓶ビールを配り、各自評価を紙に書いてきてもらいました。

 

 

結果は、かつて他のアンケートや評価でみたことない程の散々たるもの!「こんなのビールじゃない!」「大手がうまい!」(※まめまめ飲むの今回ではありませんが…)。普段店でも見受けられる傾向だけれど、長年大手ビールの味、のどごしに慣れ親しんでこられた紳士方には、特に華やかなホップの香りや苦みは嫌煙されがちです。

 

それでもやっぱりこのメンバーに飲んでもらいたいんや!おかげさまで、目指す方向性はすぐにみえてきました。

 

 

 

麦芽だけでなくホップや酵母が揃った頃、「やっぱり一発勝負は怖いな」とまさや。そりゃそーやろ!何もかもがはじめての組み合わせ。はじめて使う酵母。ちょうど入手したてだった20Lのタンクが功を奏し、試作することになりました。

※試作については、既に瀬戸内通信社の小林さんがくわしく書いてくださっているので引用させていただきます※
(小林さん、ありがとうございます!)

 

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「本番醸造までに3回試作をしました。初回は酵母感が強く出すぎた上に、麦芽とホップの存在感が弱くなってしまいました。2回目の試作では麦芽とホップを強くしようと多めに入れてみたら、今度は糖分が上がりすぎてシロップジュースみたいになった挙句、とても苦く、アルコール感が強くなってしまって……」

3回目は、糖分を抑えながらも麦芽感を出すために麦芽をローストし、量を元に戻しました。苦味は抑えながらも香りを引き立たせるためにホップを入れるタイミングを変え、醸造方法も手のかかる方法でやってみました。ところが、ローストしたせいかうまく糖分が下がらず、またもやシロップっぽくなり、香りもそんなに出なかったという結末に。そう簡単にはいかなかったですね」

引用元)瀬戸内通信社 https://setouchipress.com/mamemame/

 

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商品には物語がある、ストーリーは人の心を動かす。「〇〇産のもの、〇〇さんがつくったもの、無農薬、オーガニック…」世の中にいろんな言葉が溢れている。「小豆島産原料100%」なんて、それだけでもすごい響き。だけど、どんな魅力的な素材を使っても、言葉を並べても、当然ながら最後はできあがったものの品質がすべて。

 

さらに今回のビールに使うもののすべては手間暇かけられた、海外産の原料よりも何倍も原価が高い素材。必然的に完成する商品価格も他のもの以上に高くせざるを得ない。そんな原料、価格に匹敵するだけの商品、飲んだ後に納得してもらえるだけの出来栄え。そこに至るに必要なものは技術。

 

できるんかな~あぁプレッシャ~…。

 

 

そんなことを話しながら試作を重ねている間にも、だんだんと減っていく貴重なホップ。年をまたぎながらも試作は3回が限界となり、その中で得たたくさんの意見・駄目出しをヒントにいざ本番に挑みました。

 

ここに至る数カ月は、これまでのどの仕込みよりも素材ととことん向き合った時間。これ!と決めた原料で、調整するのは素材の配合、使用方法、醸造工程、素材の使用方法等々。それだけ。それだけで毎回別人のように表情を変えうまれてくるビール。醸造開始以来の目標は、予想外に技術面での大きな学びとして醸造家の身にかえってきました。

 

 

こうしてできあがった今回の「SHODOSHIMA100」。プロジェクトに関わってくださってきた、あの数々の辛口コメントをくださったみなさんからの「おいしい」「おめでとう」を聞けた時の安堵や感動はきっと生涯忘れないでしょう。

 

もしもの話、プロジェクトメンバーがIPAファンの集まりだったら、全然違うビールになってたのかな。

 

これはまだまだ最初の第一歩。あくまでひとつのかたち。生産量の課題、増やしたい麦芽やホップの種類、そして生み出すビールの無限の可能性を前に、立ち止まっている暇はありません。