クラフトビールと地ビール。
人と話したり、取材を受けたりする中で、時折考えさせられるものです。
開業当初は「地ビール」をつくるんや!と意気込んでいたけれど、今はクラフトビールであり地ビール。そんな感覚が強くなっています。地に根差し、地のものを使いながらも、ベースは崇拝してやまないクラフトビール。そしてクラフトマンシップを忘れずに革新を遂げていきたい。
クラフトビールの世界は、最高においしくて面白い。それは、そう呼ばれるビールがおいしいだけにとどまらず、あらゆるつくり手が一地点に留まることなく、絶えず驚きや感動を発信し続けていることも大きな理由。ただ技術を会得するだけでなく、何かの真似やフリをするのでもなく(一部にはある)、基礎技術・スタイルをベースにどのブルワーも常に挑戦的で革新的。商品もブランディングもぶっ飛んだことが次々と起こるような業界。
飲む度に「うわー!こんなビールつくりたいなー!!」という感動も絶えず、刺激しあう仲間、横の繋がりもとても深い。
(↑ビールになると真剣)
その根底にあるのはきっと「クラフトマンシップ」、創造精神が常に唯一無二の新しいおいしさをつくり出していく。BREWDOGの書籍にも同様の表現があり、世界共通の「クラフトビール」の定義づけはないけれど、自分達が目指すクラフトビールの姿だと思っています。
ただ、言葉以上に、実際それを具現化する=クラフトビールとしての技術・スタイルをベースに、地のものを使いビールをつくる。これがとても難しい。つくる程、突き詰める程に壁にあたります。
IPA、スタウト、セゾン…、スタイルどおりそれぞれシンプルにつくった方が何倍も容易い。「それだけの方がうまいものつくりやすいやん」と話すこともしばしば。そもそもそれだけだって極めるのはとても難しい。それなのに、わざわざ島の素材を投入していくのだから。
例えばフルーツ。素材感は感じてもらいたい、けどビールとしてのベースは崩したくない。そのバランスに試行錯誤。でもまだ序の口。くろまめまめやきんまめまめにおいては、そもそも乳酸菌やビールに不向きな菌をもっているようなものをあえて投入するんだから一種の自爆テロギリギリ行為。一歩間違えばオフフレーバー、汚染にだって繋がりかねません。小豆島にいる以上避けて通れないオリーブの使い方も悩みどころ。ポリフェノール・油分も大敵だけれど、人々に馴染み内オリーブそのものの風味の表現には毎年頭を悩ませます。
(↑オリーブ残渣)
けれど、だからといってそこを避けるつもりは毛頭なし。
醸造を繰り返している中で、何度と商品、時にそもそものコンセプトまで見直す時があります。定期的にふたりでいろんなことを根底からひっくり返して話すことがあります。だけど「小豆島×ビール=『 』」のコンセプトは私たちにとってゆるがないもの、今のところこれこそが私たちがここでビールづくりを続ける意義であり、追い続けたい可能性。
もしかしたら、島のもの・環境の中からおいしいビールを創り出す。地ビールに挑戦し続けることにこそ、最大のクラフトマンシップ・創造性が必要なのかもしれません。まだまだ壁も多いけれど、「クラフトビールであり地ビール」だからこそ挑戦をつづける面白さが増すように思いもします。
…ドMですね。